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飛騨巡礼

日一日と大気が冴え、寒さ増してまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょう?

先日、取材を兼ね飛騨高山の山村や古寺に残る円空仏を参拝に行ってきました。

円空は江戸時代初期に活躍した遊行仏師で、今でもその生涯の多くは謎に包まれていますが、北は北海道、南は奈良まで彼が彫ったとされる円空仏という独特な仏像が多く残されています。

今回は晩年に円空が滞在して多くの作品を残したという高山市の古刹千光寺と清峯寺、奥飛騨に残される円空仏を拝観して巡りました。


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清峯寺に向かう途中に流れる宮川。もの寂しいが力強い日本の原風景。



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一番心に染み入ったのは、この清峯寺の十一面千手観音像。何ものにもとらわれない軽やかな微笑みと、家で子を迎え入れる母親のような優しさに、ただただ時を、自分を忘れてこの像を通して現れるものと対峙しました。



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輪番で清峯寺を管理してらっしゃる地元の古田さん。お話を伺い、円空仏にたいする深い想いに胸を打たれました。円空は今でも地元の人々とともに生きている。
また古田さんのお話では、このお寺の建つ安房山の頂上から、石川県の白山を望むことができ、円空が白山信仰系の修験者であった可能性を示唆しています。



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千光寺に向かう旧参道に立つ樹齢1200年、天然記念物の五本杉。円空はこうした樹木に霊性を見て、鉈や斧を使って元々そこにいた神や仏をとり出してみせたのでしょう。



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千光寺のびんずる尊者像。通称「撫でぼとけ」と言って痛いところを撫でると癒えると言われているそう。実際にこの像が黒光りしているのは多くの人々が、それぞれの思いでこの像を撫でたため。円空の作仏の根底には、いつもあまねく生き物たちに対する深い慈しみの心があります。


美しいものと醜いもの、優しいものと恐ろしいもの、相反する二つの要素を持ちながらも、それを超えて圧倒的に静かで安定した、清々しい何かが円空仏の中にあります。それとともに見ているとホッコリしてしまうような軽やかな優しさも。
円空は”そういった何か”を作品を通して、現代に生きる我々にまで語りかけようとしています。

今回、円空仏とそれと共に暮らす人々を通して、改めて仏教美術のあるべき姿、意義を再確認することができました。




Gallery HIMALAYAN ART 牧野





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まとめ【飛騨巡礼】

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