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ジャクソン・ポロックの静けさ

春遠い厳しい寒さの日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

丸の内にある東京国立近代美術館で開催されている、アメリカのモダンアーティスト、「ジャクソン・ポロック展」に行ってきました。


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ペンキ缶に突っ込んだ筆から滴る絵の具を、即興的にたらして描く、「ドリッピング」という手法の奔放さのために、一見、彼の作品は無秩序で混沌とした印象を与えます。

しかし、無軌道に幾重にも垂らされたダイナミックな線が、結果的に秩序やある種の調和をもたらしてるが故に、彼の作品は子供の落書きとは一線を画した評価を与えられてます。

ですが、僕が今日、彼の(中期の)作品から受けた印象は〝カオス”でも〝ハーモニー”でもない、ダイナミックに踊る線や、溢れる色彩の奥にありながら、同時に剥き出しになっている、圧倒的な〝静けさ”でした。


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ポロックと交流のあった、シュルレアリズムの作家たちは、自分の無意識の領域から湧き上がってくるものを描くことに専念しました。
彼らの作品の中では、私たちの日常ではありえないような〝意味”と〝形”が結びついています。
一度でも作品を見たことがあれば分かると思いますが、それは〝グニャリ”とした奇妙な感覚を受ける、まるで夢の中の出来事のような作品たちです。

無意識には、私たちの感情や欲望などが、未分化のまま詰め込まれています。
そこを探るのは、ある種の充実感を伴うものです。自分を知り、自分になるための行為。

しかし、そのようなシュルレアリスト達が描いた作品には、ポロックが出現させてみせた、あの圧倒的な〝静けさ”はありません。

昨今では、こうした芸術の分野だけでなく、〝シンクロニシティ”や〝集合意識”、はたまた〝引き寄せ”といったような無意識の探求をベースとした自己実現の方法が流行っているようです。

しかし、ポロックの作品を前に、そろそろ私たちもポロックが出現させてみせた〝静けさ”的なものに、もっと目を向け始めてよい時期に来ているのではないか?と感じました。


Gallery HIMALAYAN ART 牧野



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