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ブータンの民話

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ヘレーじいさんの取り引き


 タンポー、ティンポー
むかし、ある暑い日のことです。ヘレーじいさんはそば畑を耕していました。ヘレーじいさんは村の人気者でした。見かけではわかりませんが、それはとてもおもしろいおじいさんなのです。体はやせていますが,ふくらはぎはぷっくりふくらんでいて、そのうえ脚が曲がっています。村の集まりがあると、あごひげをなでているヘレーじいさんをいつも見かけます。ここ何年間かはこれといって働いていないのですが、村人たちが面倒をみてくれていました。
 さて、ヘレーじいさんは鍬を持って、のろのろとやる気がなさそうに働いています。そば畑を耕すのは大変骨の折れる仕事なのです。いいかげんうんざりした頃、じいさんの鍬が大きな木の切り株にあたりました。じいさんはあごひげをなでながら、どうしたものかと切り株をながめました。しかたがない、掘り出そうと決め、さっそくとりかかりました。少しずつ根っこを掘っては、力いっぱいひっぱってみます。汗が吹き出し、手にはマメができてヒリヒリ痛んできました。ちょうど、太陽が山に沈んだ時でした。よいしょとひっぱると、大きな音とともに切り株がスポッと抜けました。
 すると、切り株の抜けたあとに何かあるのに気がつきました。なんとよく見ると丸くて平べったいトルコ石ではありませんか。料理に使う平鍋のように大きいトルコ石です。ヘレーじいさんは自分の目が信じられませんでした。びっくりして目をまん丸くしたまま、しばらく棒立ちになっていました。そしてしげしげと眺めました。今までこんなにきれいなものは見たことがありませんでした。
 ヘレーじいさんはひとり言を言いました。「こんなトルコ石を手に入れたからには、もう働く必要なんかないわい。これを売れば金持ちになれるぞ!」そこで宝物を手に、ヘレーじいさんは得意気に意気揚々と市場へ向かいました。しばらく行くと、馬を引いた男に出会いました。
 「ヘレーじいさんやーい!どこへ行くんだい」ヘレーじいさんは浮き浮きした気分で言いました。「わしのことをそんなふうに気軽に呼ばんでくれよ。それよりも、まあお聞き。そば畑を耕していたら、切り株が出てきたんだよ。その切り株を抜いたら、なんとトルコ石が出てきたのさ。それでこれから市場に売りに行くところさ。ところでおまえさん、その馬をわしのトルコ石と交換する気はないかい?」

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 男はびっくり仰天してしまいました。このじいさんは気が狂ったのではないかと思いました。そのトルコ石は値をつけられないくらい高価なものなのです。この男はこんなチャンスを逃がしてなるものかと、すぐにじいさんの言うとおりに取り引きに応じました。トルコ石を手にした男は、ヘレーじいさんの気が変わっては大変と、大急ぎで別れを告げて行ってしまいました。しかし、ヘレーじいさんは大満足でした。馬をひいて、また、市場の方へと歩きだしました。
 しばらくすると、今度は雄牛を連れた男に出会いました。
 「ヘレーじいさんやーい!どこへ行くんだい」ヘレーじいさんは楽しげに言いました。「そんなふうに気軽に呼ばんでくれよ。それよりお聞き、そば畑を耕していたら切り株が出てきてな、その切り株を抜いたらトルコ石が出てきたのさ。そのトルコ石をこの馬と交換してもらったのさ。ところでおまえさん、その牛とわしの馬を交換するつもりはないかい?」雄牛を連れていた男は、信じられず唖然としました。彼の雄牛は、ヘレーじいさんの若くて立派な種馬とは比べ物にならないほど貧弱な老牛だったのです。しかし、すぐにわれにかえると、大急ぎでこの取り引きに応じました。こうしてまたヘレーじいさんは、牛の角に綱をつけて市場へと歩いていきました。
 今度は、羊を連れた男に出会いました。またまた、どこへ行くのかと聞かれました。「そんなふうに気軽に話しかけんでくれよ。それより、まあお聞き。畑を耕していたら切り株が出てきて、その切り株を抜いたらトルコ石が出てきてな、そのトルコ石を馬と交換し、その馬をこの雄牛と交換したのさ。ところでおまえさん、その羊とわしのこの雄牛を交換する気はないかい?」羊を連れた男は驚きましたが、喜んで取り引きに応じ、ヘレーじいさんの気が変わらないうちに牛を連れて、大急ぎで行ってしまいました。ヘレーじいさんは商売上手な商人になったような気分でした。意気揚々と、また歩き始めました。わずかな間に、このように手早く取り引きがうまく運んで、じいさんはとても嬉しかったのです。羊はメェーと鳴きながら、新しいご主人様の後をのろのろとついていきました。

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しばらくして、雄鶏をかかえた男に出会いました。またも、どこへ行くのかと聞かれると、ヘレーじいさんはご機嫌な声でなじみのセリフを言いました。「ヘレーじいさんやーい!なんて、気軽に呼ばんでおくれよ。それより、まあお聞き。畑から切り株を抜いてトルコ石を見つけ、それを馬に換え、その馬を牛に換え、その牛を羊に換えたのさ。ところでおまえさん、その雄鶏とこの羊を交換する気はないかい?」雄鶏をかかえた男が断るわけがありません。大喜びで羊を受け取ると、雄鶏をじいさんに渡しました。ヘレーじいさんは雄鶏を仰々しく腕にだいて歩きだしました。
 すると、一人の男が自分の心の思いを歌に唄いながらやってくるのに出会いました。男はヘレーじいさんに気づくと、歌うのをやめ、どこへ行くのかとたずねました。ヘレーじいさんはまた楽しげに言いました。「まあお聞き。畑から切り株を抜いたら、トルコ石が出てき他のサ。それが馬になり、馬が牛になり、牛が羊になり、羊が雄鶏になったのさ。ところでおまえさん、おまえさんの歌をこの雄鶏と交換する気はないかい?」歌好きの男はびっくり仰天、驚いて棒立ちになってしまいました。ヘレーじいさんは男の腕に雄鶏をあずけ、自分は嬉しい心のうちを口ずさみながら遠ざかっていきました。
 ブータンでは、誰が見ても馬鹿げた取り引きをするものを”ヘレーじいさんのようだ”と言います。

          
              クンサン・チョデン著 ブータンの民話と伝説より 


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